食道、胃、十二指腸、大腸の腫瘍性病変に対する内視鏡診断と治療を主に行っています。それらに対し、高度な技能が必要な内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を早期から導入し、宮城県はもとより全国でも有名な施設となっています。近年は、非常勤医師大圃研先生(NTT東日本関東病院)の月一回の指導もあり大腸腫瘍に対するESDの件数が大幅に増加しています。消化管出血は24時間受け入れ可能で、出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的止血術、食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)など行っています。大腸ポリープに対するポリペクトミーや日常頻繁に遭遇する感染性腸炎は、スタッフ全員が数多くの経験を有し、最も得意とする分野です。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患においても日本消化器病学会の専門医が、ガイドラインに則した適切な治療を提供しています。稀な小腸疾患に対しても小腸内視鏡やカプセル内視鏡による診断も行っています。胃瘻造設は、高いリスクの患者さんに実施することが多いため、適応やリスクを当科のデータをもとに検討させていただき、安全に実施するよう務めています。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡検査(EUS)を用いた胆膵領域の内視鏡診断と治療に関しては、全国でも屈指の施設として知られています。診断においては、MRIやCTでの侵襲性の低い検査法も用いており、的確な診断を行うよう務めています。治療では、胆管結石に対する内視鏡治療や胆道ドレナージ術は、最も得意とする分野で、豊富な経験を有し、近隣や東北の各県から治療困難例が多く紹介され、高い信頼を得ています。急性胆嚢炎や胆管炎、膵炎などの急性期疾患も24時間対応が可能です。急性胆嚢炎は、ガイドライン上早期手術が推奨されており、消化器外科と連携しながら、最短の治療日程を提供しています。日本肝臓学会認定の関連施設として肝臓疾患に対しても専門的な診療が可能です。肝胆膵の腫瘍に対する化学療法においては日本消化器病学会の専門医や日本がん治療認定医が、ガイドラインに則した適切な治療を提供しています。
昭和61年の救急センター開設時に当科が設置され、その当時まだ一般的では無かった経皮的冠動脈形成術(PTCA)を開始しました。冠動脈インターベンション(PCI)と名を変え、現在35年を超える経験を持っています。治療した急性心筋梗塞患者数は3000名を超えました。常勤スタッフは7名で、救急医療、病診連携、病病連携に励んでおります。現在、当科では心筋梗塞・不安定狭心症に対する救急治療、不整脈に対するアブレーション治療、近年激増している心不全に対する治療、を三本の柱として位置付けています。心筋梗塞は迅速な治療が患者さんの予後に直結するため、24時間365日救急対応を行っています。2019年から開始したアブレーション治療は軌道に乗り、経験を積み重ねています。心不全については院内に看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカーおよび医師と、多職種からなるハートチームを設立し、病院で一丸となって治療にあたっています。虚血性心疾患・不整脈・心不全それぞれの治療が有機的に繋がり、質の高い医療を提供できるようになってきました。また臨床研究も積極的に取り組み、国際学会、国内学会、各種研究会に多くのデータを発表しています。学生の教育、臨床研究を通して東北大学循環器内科とも緊密な関係を保っており、当科で研修したレジデントは即戦力として高い評価を得ています。
肺炎に関しては、治療開始とともに口腔嚥下リハビリチーム、褥瘡管理チーム、栄養サポートチームが介入し、早期から理学療法士によるリハビリが開始されます。以前と比べて広域抗菌薬の使用量は著減し、耐性菌で苦労することも少なくなりました。昔よく悩まされた入院中の肺炎再発は、今は殆ど見られません。治療は比較的短期間で終了します。肺癌に関しては、当院に呼吸器外科はありませんが、優れた他院呼吸器外科との連携で、遅滞ない手術が可能となっております。手術不能症例については、放射線化学療法ないし放射線療法、化学療法、あるいは緩和療法となります。放射線を用いる治療は他院に依頼しますが、その後の維持療法は当院で行います。COPDに関しては、診断には肺機能検査が必須ですが、検査には時間がかかり、手技には熟練を要します。当院では高い精度管理で肺機能検査を提供しています。病態の把握には胸部CT検査が有用であり、右心不全の合併など心機能検査を要することも少なくありません。気管支喘息に関しては、吸入ステロイド療法の普及はまだ十分とは言えません。また吸入ステロイドを処方しても十分効果が見られないときは、診断の見直しと吸入手技の再指導が必要です。ご紹介頂いたコントロール不良な患者さんに対して、早急に症状の改善を図り、患者教育および服薬指導を施した後、逆紹介させて頂きます。
上下部消化管から肝胆膵疾患まで、消化器全般の外科治療に対応しています。悪性腫瘍の治療は、詳細な術前評価の上で過不足のない治療を心がけ、適応症例に対しては腹腔鏡手術に代表される低侵襲治療を積極的に導入しています。急性腹症などの救急疾患についても、労をいとわない痲酔科や手術室スタッフの協力のもと、24時間、365日体制で対応しています。過去5年間は年間約1200例の手術を行い、その内の約2割は救急疾患に対する緊急・臨時手術ですが、スタッフ、後期研修医併せて13名体制(2021年度)できめの細かい診療を提供しています。外科手術の必要な患者さんは、直接当科外来に紹介頂きますと初診日のうちにCTをはじめ術前に必要な検査を行い、多くの場合で手術日を決めることも可能です。手術までの期間は1~3週以内とし、治療をお待たせすることの無いように努めています。当科では手術のみならず、術前・術後の化学療法、がん支持療法を含む緩和ケア並びにターミナルケアも行っています。栄養サポート(NST)、緩和ケアや感染対策(ICT)などの院内チーム医療、認定看護師、理学・作業・嚥下などの療養士によるリハビリによる周術期管理を行い、日常生活への復帰が順調に進むように全力で取り組んでいます。
虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術では、高齢者や合併症のある患者さんには人工心肺を使用しない冠動脈バイパス(Off-pumpバイパス術)を行い、またバイパスの長期開存率の向上をめざした動脈グラフト等の使用を心がけております。弁膜症手術(弁形成術、弁置換術、メイズ手術)では自己弁を温存する手術手技や新しい人工弁により、術後のQOLは飛躍的に向上しています。また弁膜症患者に多い心房細動に対してもメイズ手術を積極的に追加しております。大動脈疾患に対する人工血管置換術、ステントグラフト内挿術では、従来より、急性大動脈解離、大動脈瘤破裂などの救急、紹介患者の緊急手術に対応できる体制をとっています。下肢静脈瘤の新しい治療として、従来の血管に硬化剤を注入して閉塞させる硬化療法や、血管を引き抜く手術であるストリッピング手術に加え、高周波を利用して血管内の壁を熱で焼き、閉塞させる血管内焼灼術を導入いたしました。従来のストリッピング手術と同じ効果が得られるうえ、出血などのリスクが少なく、大変メリットの多い治療法です。医療情報・手術の公開について、当科では本人の了承があれば家族の方は実際の手術の様子をモニターテレビで見ることができ、医療情報を積極的に公開しております。その他、自分の血液を貯血しての無輸血手術や手術時間の短縮に努め、より低侵襲に、患者さんの術後の生活活動能力の向上quality of life(QOL)を第一に考えた治療を行っています。
救急センターは、1986年に開設して以来、主として消化器・循環器・呼吸器疾患の救急を担ってきました。欧米の救急センターと同様に「初療のみを行い、その後の治療は各科専門領域の医師に委ねる」いわゆるER(emergency room)型で運営されており、各診療科のバックアップのもと緊急内視鏡検査・治療、カテーテル検査・治療、外科緊急手術等、高度な専門検査・治療を365日24時間提供しております。救急搬送時間短縮のため“オープンシステム”の推進を図っております。