はじめに
臨床工学技士~いのちのエンジニア~とは
「臨床工学技士」とは、人工心肺装置や人工透析装置、人工呼吸器、心臓ペースメーカといった生命維持管理装置の操作および保守点検などを行う医療機器のスペシャリストです。
国家資格として1987年に臨床工学技士資格が制定され、翌年に施行されたことを受け、医師の指示の下に臨床工学技士が操作できるようになりました。
病院では、高度な医療機器がたくさん使用されています。一つの操作が患者さんに大きく影響するものであるため、機械の操作には十分な注意を払う必要性があります。現在の医療において、医療機器は欠かせないものとなっています。そして、医学と工学の両方の知識をもつ“いのちのエンジニア”臨床工学技士は、機器を通して、たくさんの患者さんの命を支えています。
理念
- チーム医療に貢献し、生命維持管理装置の操作・保守点検を行い、安全と安心できる医療を提供する。
- 常に改善を求め続ける姿勢を持ち、広く学術的に研鑽を続け、自己成長に努める。
スタッフ構成
技士長 | 千葉 美樹 |
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内視鏡センター技士長(医療機器安全管理責任者) | 尾越 登 |
主任 | 富田 元沖 |
主任 | 跡部 明希 |
技士 | 田沢 未森 |
技士 | 小川 峻 |
技士 | 我妻 莉生 |
業務内容
医療機器保守管理業務
- 週に1〜2回、院内をラウンドし始業点検・使用中点検・使用後点検を行っています。
- 現在保守管理している医療機器は約1,500台であり、医療機器管理ソフトを用いて1台ごとの「カルテ」を作り、一括管理することで効率的で適切な運用ができるようにしています。
医療ガス保守管理業務
- 院内の酸素・圧縮空気・吸引の保守管理を行っており、圧力測定や漏れのチェック、簡易的な部品交換を行っています。
開心術における人工心肺業務
心臓の手術の際に、心臓や肺に代わる働きをする人工心肺装置を操作・管理します。
また手術の際は、たくさんの医療機器が使用されるため、人工心肺装置以外の機器の操作や使用前の点検などを行っています。
OPCAB,腹部大動脈手術時における自己血回収術、EVAR・TEVARの術野介助
- 人工心肺を用いない心臓の手術や、大血管の手術の際の出血に対応するための自己血回収装置の操作を行います。
- ステントグラフト内挿術では、清潔野に入りデバイスに関連した介助を行っていきます。
補助循環業務(IABP,PCPS)
- 自分の心臓が弱った時に、自己の心機能が回復するまでの間、一時的に心臓と肺の機能を補助・代行する装置です。
- 圧を補助するIABPや流量を補助するPCPSの操作を行います。
血液浄化業務(透析やCRRT等)
- 体内に貯まった老廃物を排泄あるいは代謝する機能が働かなくなった場合に行う治療で、血液透析・持続的血液透析濾過・血液吸着など、様々な血液浄化療法が存在します。
- 血液浄化療法に必要な機器の保守管理・操作を行うとともに、穿刺業務も行います。
腹水濾過濃縮再静注法(CART)
- 肝硬変や癌性腹膜炎など、血液中のアルブミンが少なくなり血管外に漏れ出た水分が腹膜に溜まります。
- 溜まった腹水を濾過濃縮してアルブミンなどの有用なタンパク成分を回収する機器の操作を行い、再度体内に戻します。
高気圧酸素治療業務
- 当院では主に消化器の手術後の腸閉塞にこの治療を用いています。
- 通常の気圧より2倍の気圧環境の中で100%の酸素を吸入することによって、血液中の酸素量を10~15倍に増加させ障害の修復を促進させます。
心臓カテーテル検査業務
- 心臓病の診断・治療における検査一連の記録をするためのコンピュータを操作します。治療の際は、外回りやIVUS・OCTなどのイメージング装置の操作を行います。
- 緊急時には補助循環装置の操作を行います。
ペースメーカ業務(体外式・体内式の植え込み・クリニック・体内式ペースメーカ植え込み後のチェック、遠隔モニタリング)
- ペースメーカの埋め込みやジェネレータ交換に立ち会い、アナライザを操作し、電極の最適な留置部位を調べたり、プログラマを用いてペースメーカの設定を行います。
- 退院後のペースメーカのフォローアップを行っています。
- 遠隔モニタリングシステムを導入し、医師と共に医療機関へ送信された植え込み型デバイスの情報を管理しています。
カテーテルアブレーション業務
不整脈を起こす原因となっている異常な電気興奮の発生箇所を焼き切る治療法で、必要な機器の操作を行います。
軟性内視鏡業務(軟性内視鏡:口や鼻、肛門などからカメラを挿入し、検査・治療を行う)
検査が始まる前に、生体情報モニタ・内視鏡システム(画像モニタ、システムプロセッサ、光源装置、C02送気装置など)を中心に始業点検を行い安全な検査 治療を行えるよう環境を作っています。また、高周波電流を使用する治療の際は治療デバイスの準備や使用機器の操作など、医師の補助業務を担当しています。
職員に対する医療機器教育
- 新人看護師の医療機器の教育の他、新しい機器が導入されたときに勉強会を開催し、安全使用を心がけています。
- 全職員に対して、輸液ポンプ・シリンジポンプ、人工呼吸器、除細動器・電動式低圧吸引器・モニター、ペースメーカ等の医療機器安全使用研修会を開催しています
学生実習の受け入れ
- 臨床工学技士養成校の学生の実習を受け入れています。
- 現場での体験を通して、将来医療に携わる臨床工学技士として、知識や技術だけでなく、チーム医療には社会性や協調性が不可欠であることを学んでもらえるよう指導しています。
業務実績(2020年度)
- 血液透析 162件
- CHDF 154日 16件
- GCAP 29件
- エンドトキシン吸着 7件
- ビリルビン吸着 6件
- 胸水腹水濾過濃縮再静注法 49件
- 高気圧酸素療法 135件
- 心臓カテーテル検査(診断)338件
- 心臓カテーテル検査(治療)204件
- カテーテルアブレーション治療(心筋焼灼術)66件
- IABP(大動脈バルーンパンピング)29件
- PCPS(経皮的心肺補助)60日16件
- 人工心肺 26件
- ペースメーカ植え込み 39件
- ペースメーカジェネレーター交換 18件
- 院内医療機器教育
ME機器点検台数
4月 | 1,592台 |
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5月 | 1,490台 |
6月 | 1,824台 |
7月 | 1,697台 |
8月 | 1,615台 |
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9月 | 1,655台 |
10月 | 1,792台 |
11月 | 1,542台 |
12月 | 1,619台 |
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1月 | 1,458台 |
2月 | 1,460台 |
3月 | 1,868台 |
認定資格
- 体外循環技術認定士 4名
- 呼吸療法認定士 3名
- 第2種ME認定士 7名
- ITE 心臓管インターベンション技師 2名
- 医療機器情報コミュニケータ MDIC 1名
- 危険物取扱 1名
- 透析技術認定士 1名
- 消化器内視鏡技師 1名
所属学会
- 公益社団法人日本臨床工学技士会
- 一般社団法人宮城県臨床工学技士会
- 一般社団法人日本体外循環技術医学会
- 一般社団法人集中治療医学会
- 一般社団法人日本人工臓器学会
- 一般社団法人日本高気圧環境・潜水医学会
- 一般社団法人日本不整脈心電学会
- 日本心血管インターベンション治療学会
対外的活動
- 一般社団法人宮城県臨床工学技士会 会長
- 一般社団法人宮城県臨床工学技士会 事務局長
- 日本体外循環技術医学会 理事
- 日本臨床工学技士会 代議員